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法撃剣士スタークォーツ パート1

 スタークォーツたちが生活している都市内蔵型巨大宇宙船アークスシップの外へ出かけるためには、宇宙船の発着が行われているゲートエリアを利用する必要がある。
「ゲートエリアまでは車で30分かかりますから、移動中に任務の資料を確認していてください」
 ハトミは車のダッシュボードから文書閲覧用のタブレットを取り出してスタークォーツに渡す。
「わかりました」
 スタークォーツはタブレットを起動し、保存された資料を確認する。
 今回の任務は、オラクル船団水産局から依頼されたものだ。目的地は惑星ウォパル。数年前に発見されたばかりで、惑星上の大部分が海を占める美しい星だ。調査の結果、ウォパルで食用に適した海洋生物が確認され、食糧確保のために漁業が開始される事となったのだが、運営が開始されたばかりの漁港がオルクブランの襲撃を受けたという。
 オルクブランは全長5メートルから8メートルの大型生物だ。漁港を襲撃した個体は、ダーカーの侵食が確認されており、非常に危険な状態にあるという。これはダーカーが持つ恐ろしさの一つでもある。生物・無生物問わずにダーカー以外の存在に侵食し、変容させてしまう。オルクブランが漁港を襲撃したのも、ダーカーによって凶暴化してしまったためだ。
 この恐るべき力によって幾つもの惑星が環境を破壊されて滅んでしまった。唯一の例外はオラクル船団の人間のみであり、スタークォーツ達の体内にあるフォトンと呼ばえるエネルギーがダーカーの侵食に対抗できる。
 襲撃による死傷者は出ていないが、オルクブランは今だに漁港に居座っているため、このままでは漁業が再開できない。宇宙船の内部で生活している都合上、人々が口にする魚介類は基本的に船内で養殖されたものに限られている。天然の食料は貴金属よりも貴重な資源なのだ。
「そろそろゲートエリアへ到着します」
 ゲートエリアは一般利用区画とアークス利用区画の2つに分かれている。ハトミはアークス利用区画の駐車場に車を止めた。
「キャンプシップはどうなっています?」
 車を降りながらスタークォーツはハトミに尋ねる。キャンプシップはアークスが移動に使うワープ機能付きの小型宇宙船だ。
「8番発進口で待機中です。必要な手続きは全て済ませてありますから、すぐに出発できます」
 事前の情報収集も含めて、その手際の良さにスタークォーツはハトミを信頼しつつあった。万難を排して任務に望めることほど頼もしいことはない。
 発進口に到着した二人はキャンプシップに乗り込む。操縦はハトミが行うので、スタークォーツは副操縦席に座った。
「それでは出発しますよ」
 ハトミの操縦の腕前は彼女の人柄が現れているかのように、丁寧でなおかつ手早かった。
 アークスシップから離れた後、キャンプシップはワープ態勢に入る。船首からワープホール生成ビームが放たれると、空間に直径15メートルほどの穴が空き、その先に青く美しい惑星が見えた。
 あの惑星こそがウォパルだ。
 キャンプシップはワープホールを通り抜ける。あまりに一瞬のため、数百、数千光年も移動したという実感はない。
「出撃準備してきます」
 ワープ後、スタークォーツは席を立ち後ろの貨物室へと向かった。
 貨物室にあるコンテナを開くと、今回の任務のためにハトミが用意した装備が入っていた。それは水中戦用装備であり、空気ボンベと4つの水中推進装置で構成されている。
 スタークォーツはまず空気ボンベを背負う。体を機械化したキャストでも、脳は生身もままなので空気の供給は必要だ。続けて、推進装置を左右の肩と腰の両側に装着する。装備の動作確認と正しく装着できているかの確認を終えた頃には、キャンプシップはウォパル漁港の上空に到達していた。
『スタークォーツさん、これから後部ハッチを開きます。そこから出撃してください』
「わかりました」
 通信機からのハトミの声にスタークォーツは返答する。
 開かれたハッチから地上を見下ろすと、オルグブランは食事の真っ最中だった。出荷用コンテナを破壊し、中にある海産物を貪っている。
「食事に夢中でこっちに気づいていない。チャンスね」
 スタークォーツは腰下げていた剣を抜き、その切っ先をオルグブランへと向ける。
「はっ!」
 短い気合いの後、オルグブランの背中に爆炎が生じる。任意の場所に爆発を生じさせるテクニック、ラ・フォイエだ。
 突然の攻撃にオルグブランは慌てて海へと逃げる。
「さて、ここからが本番ね」
 スタークォーツは敵を追うために海へ飛び込む。
 海中では食事を邪魔されたオルグブランが敵意のこもった眼差しで待ち構えていた。
 スタークォーツは推進装置を起動させ、水生生物に匹敵するほどの機敏さでオルグブランの懐に飛び込んだ。
 刃が巨大な胸板を撫でるように斬る。青く染まった世界で血煙が立った。
 オルグブランは距離を取った。スタークォーツが危険であると理解したのだ。自分にとって天敵であると。
(逃さないわよ)
 スタークォーツはオルグブランを追いかけ、背中を攻撃しようとする。しかし、オルグブランは体をよじり、尻尾をムチのようにしならせて叩きつけてきた。
 オルグブランが距離を取ったのは逃げるためではなく、相手をひきつけて不意打ちするためなのだ。天敵を前にした動物のすることではない。ダーカーに侵食されているためだ。生存本能よりも闘争本能がはるかに上回り、天敵だから逃げるのではなく、天敵だからこそ殺意を向ける。
 スタークォーツは水中でくるりと回転し、両足でオルグブランの尻尾を受け止め、接触の瞬間に膝を曲げて衝撃を吸収する。それでダメージを打ち消すことは出来たが、運動エネルギーの全てを消し去ったわけではなかった。彼女の体は尻尾に押し出されるような形でオルグブランと離れてしまう。
 一転してオルグブランが攻勢に転じる。巨大な筋肉の塊である両足で海底を蹴り、恐るべき速度でスタークォーツに突進してきたのだ。
 巨大な砲弾が迫ってくるかのような突撃にスタークォーツは紙一重で回避するが、すれ違いざまにオルグブランの爪が掠めて右肩の推進装置を破壊する。
 水中機動中に突然推進装置の一つを破壊されたスタークォーツはバランスを大きく崩してきりもみ回転する。
(おもったよりやる)
 スタークォーツは冷静であった。残り3つの推進装置を制御し、即座に自らの体勢を整える。
 オルグブランは二度目の突進攻撃を行う。今度は先程までよりも助走距離を大きく取っている。自らの巨体を活かした優れた攻撃ではあったが、スタークォーツはそれをすでに見切っている。
 避けるつもりはない。必要ないからだ。スタークォーツは剣の先をオルグブランに向けてバータを放つ。極低温のテクニックは刀身の周囲にある海水を一瞬にして凍結させ、剣を巨大な氷の槍へと変貌させた。バータの氷で自らの武器を巨大化させる。これこそ、アマサギ流の技が一つ、【バータ:槍の型】である。
 あとは待ち構えているだけでいい。限界まで加速したオルグブランは止まることも方向を変えることも出来ず、自分から槍に突き刺さっていった。槍は心臓を貫き、即死であった。
 戦いは終わった。炎のテクニックで氷の槍を溶かした後、スタークォーツは海中から港へと上がる。振り返ると、力尽きたオルグブランの死骸が海面に浮いていた。
『お怪我はありませんか?』
 通信機からスタークォーツを案ずるハトミの声が聞こえてくる。
「推進装置を一つ壊されましたけど、私に怪我はありません。周囲に他のエネミーの反応をありますか?」
『少々お待ちを……はい、大丈夫です。周囲に反応はあいません。任務完了です』
 その言葉にスタークォーツは緊張を解く。
 水中戦をしたせいで全身が海水でずぶ濡れだった。体を、特に髪を早く洗いたい。脳以外は全てが替えの効く人工物にすぎないが、それでも自分の体は自分の体だ。大事にしたいと思うのは生身であったときと変わらない。
『これから迎えに行きますね。シャワーは無理ですが、代わりに真水の入ったボトルを用意してあるのでそれで髪を洗ってください』
 本当に手際が良い。ハトミとなら今後も良い仕事が出来るとスタークォーツは確信した。

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