世界観考察・劇中世界におけるファンタシースターシリーズ

約6分


 カスラと会うとき、クーナはふと思うことがある。この男の振る舞いは演技であるのか、それとも本心であるのか?
 しばしば彼は他人から反感を買うような行動をすることがある。情報部の主席として、情報を手に入れるためならば手段を選ぶべきではないし、一人くらい嫌われ者がいたほうが、かえって組織はまとまりやすいと言うのは彼の談だ。
 人の振る舞いというは、たとえそれが本心でなくとも、長く繰り返していればその人そのものとなる。クーナは諜報活動のカモフラージュとしてアイドルをやっいる。最初は何もかもが単なる演技であり、笑顔を振りまきながら歌を歌うなどくだらないとすら思っていたが、今では本物のアイドルとしての心が、ファンを愛する気持ちと歌に対する誠実さがこの胸に宿っている。
「では、報告を聞きましょう」
 他人から敵意を集めるかのような声色を聞いたクーナは、今の彼は嫌われ者を演技しているのか、あるいは「本物」となってしまったのかと考えてしまう。
 そのような考えを振り払い、クーナは調査報告を始める。
「ファンタシースターオンライン2、通称PSO2はオンラインゲームを装いつつも、その実態は地球から別次元にある私たちの宇宙にアバターを実体化させ、それを操作するシステムであることが判明しましたが、その前作である旧PSOも同様の機能を持つシステムであることが判明しました」
 2とナンバリングされているからには当然1も存在する。情報部の次席であるクーナは、PSO2の前作がどのような目的で作られたのかを調査した。
「PSO2との相違点は?」
「まず、アバターの送信先です。旧PSOでは地球がある宇宙でも、オラクル船団がある宇宙でもない、第3の宇宙にあるラグオルという惑星にアバターが送り込まれていました」
「第3の宇宙・・・・・・興味深い。どうやら、この世界はいくつもの宇宙で構成されているようですね」
 クーナは報告を続ける。
「第3宇宙では母星の環境悪化によってラグオルに移民しようとする文明が確認できました。この文明にはハンターズと呼ばれる組織が存在し、旧PSOで作成されたアバターはこの組織の一員として送り込まれています」
「ハンターズの活動目的は?」
 PSO2ではダーカー討伐組織であるアークスの一員としてアバターが作られる。カスラはハンターズとアークスの活動内容を照らし合わせることで、二つのシステムを作った者の目的を探ろうとしているのだろうとクーナは察した。
「行政や民間から、戦闘が伴う依頼を遂行することを目的としています。ラグオルでは惑星内の調査と移民に向けた安全確保を行っていました」
「ふむ、アークスでいうところのクライアントオーダーの対応に特化した組織といったところですね。他に我々の宇宙との共通点はありますか?」
「第3宇宙でもフォトンが存在しており、テクニック技術も確立されています。種族はヒューマン、ニューマンとこちらで言うキャストと同等のアンドロイドが生活していました」
「驚くほど共通点が多いですね。むしろ異なる要素の方が少ない」
 常に本心を隠しているカスラだが、このときばかりは素直に驚いている様子だった。
「専門家に意見を求めましたが、第3宇宙は我々の宇宙と極めて近い次元に存在する可能性があるとのことです」
 旧PSOがつなぐ第3宇宙と、PSO2がつなぐ自分たちの宇宙。別世界と言うにはあまりに似通っており、まるで兄弟のようだとクーナは感じていた。
「旧PSOの環境については概ね理解しました。次に知りたいのは、なぜ旧PSOの運用が廃止され、新たにPSO2が開始されたその理由です」
「PSO2を運営しているエスカにハッキングを行い、当時の議事録を入手しました。会議の参加者がマザーと呼ぶ女性によれば、旧PSOが接続する第3宇宙は外れであるために、運用停止を決定したようです」
「外れ?」
「マザーは「この宇宙は私が目指している宇宙ではない。ダークファルスも既に倒され、力が手に入らない以上、もはや干渉を続ける理由はない」と発言しています」
「ラグオルとの接続はマザーにとっては失敗だったということですね。しかし、その発言は別の意味で興味深いですね。第3宇宙にもダークファルスが存在しているのもそうですが、マザーがその力を欲しているのも気になります」
「少なくとも、マザーの目的が善良なものでないことは確かです」
「その目的が何かはおいおい調べるとして、マザーは新しいファンタシースターオンラインを作り上げて、我々の宇宙に対する干渉をはじめたということですね」
「PSO2開発当時の議事録によると、マザーの目的地は私達の宇宙であることが確認されています」
 ダークファルスの力を求める人物が、自分たちの宇宙へ向かおうとしている。クーナは強い敵意を感じていた。
「状況は落ち着いているものの、あまり楽観視出来ないですね。戦力の拡充を考えなければ」
「アークス隊員を増員するのですか? しかし、増やしても戦力として期待できる練度になるまで時間がかかります」
「ですから、即戦力となる人材を探します。幸いにも、具現武装という練度の低さを補えるほどに強い力を持った超能力者が地球にはいます。彼らを戦力として利用すればいいのです」
 利用という言葉にクーナは強い不快感を覚えた。
「私達のために戦ってもらうのですから、利用するのではなくあくまで協力を求める形にするべきです」
「クーナ。我々はどちらかというとオラクル船団の暗部に近い存在です。綺麗事を律儀に守る必要など……」
 その時、クーナはカスラの言葉を遮った。
「悪党を過度に演じるものは、いずれ本当の悪党に成り下がりますよ」
 殺気を込めた眼差しでクーナは強く忠告する。
「……」
 重い沈黙がこの場を支配する。
「……分かりました。その忠告は心に止めておきましょう。利用した相手の恨みを買ってしまうのは、それはそれでリスクですからね」
 この忠告を忘れないでほしいとクーナは願った。必要とあれば身内を殺す覚悟は持っているが、そもそも身内殺し自体ない方が良いのだから。
 

考察

 EP4にて、私たちがプレイするファンタシースターオンライン2が劇中に登場した。劇中PSO2以外にファンタシースターシリーズが存在するという描写は一切無かったが、少なくとも「2」とナンバリングしている以上は、「1」が存在するはずである。
 劇中PSO2が稼働開始したのはEP3終了後からである。マザーが活動を開始したのはそこから更に10年前になるので、この期間中に地球からオラクル船団への経路を作ったと思われる。ここで一つ疑問なのは、行き先を一度も間違わずに経路を作成できたのか? というものである。
 コラボイベントでは、オラクル船団の宇宙はファンタシースターユニバースシリーズの世界やファイナルファンタジー14の世界と平行世界の関係にあると描写されている。宇宙が複数存在する以上、間違って経路を作成してしまう可能性は否定できない。マザーはオラクル船団の宇宙へと経路をつなげようとしたが、誤ってラグオルの宇宙へとつながってしまい、それが劇中における旧PSOではないかと私は考えている。
 その後、オラクル船団の宇宙との接続に成功したのが劇中PSO2ということだ。
 明確にPSO2の世界は複数の宇宙が存在すると描写されたので、スーパーロボット大戦のようなファンタシースターシリーズのクロスオーバーをEP5移行の本編で展開してほしいものだ。

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